『爆弾』読書感想・あらすじ|心に残ったポイントとおすすめポイント

BLOG

🧨 『爆弾』とはどんな物語か? ――“悪意”を問う知能戦サスペンス

🖋️ 著者・出版情報 ―― 呉 勝浩について

著者は呉 勝浩氏。『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。『爆弾』は『このミステリーがすごい!2023年版』国内編、「ミステリが読みたい!2023年版」国内篇で第1位に輝く。他著作は『『おれたちの歌をうたえ』、『スワン』、『素敵な圧迫』、『Q』など。
本作は講談社の文芸雑誌『小説現代』で掲載された後刊行された。2024年7月に文庫化されており、全500ページ。
2025年10月31日に映画が公開。

⏳ 読了時間とジャンル ―― 一気読み必至の心理サスペンス

ノンストップミステリー、サイコサスペンス作品。
読了時間はおよそ5時間。読みやすいし、引き込まれる内容なので一気読み必至!

📖 あらすじ ―― 取調室で始まる“爆弾”の物語

酒屋で暴れて捕まった謎の男・スズキタゴサク。みすぼらしいこの中年男は取り調べの最中、秋葉原で何かが起きると言い出した。直後に起きた爆発。さらに三度爆発が起こると予言したこの男に、警視庁の類家るいけは知能戦で挑む。正義とは、悪とは――?

👥 登場人物と舞台 ―― 警察と“スズキタゴサク”の頭脳戦

物語の舞台は東京。中野区にある野方警察署が登場している。
複数の警察の人間による視点で描かれているのが特徴。

・類家:警視庁捜査一課。もじゃもじゃ頭に丸眼鏡、白のスポーツシューズと風変わりな男。
・スズキタゴサク:いがぐり頭、無精髭。名前も自称の謎の中年男。取調べ中に爆発を予言する。
・等々力:野方警察署の刑事。連行されてきたスズキの取調べを最初に行った。
・清宮:警視庁捜査一課。類家の上司。スズキの取調べを担当。
・倖田:野方署沼袋交番の女性巡査。スズキが起こした暴行事件に臨場した。
・伊勢:野方警察署の刑事。取調べの記録係。

🚨 導入部分 ―― 「でも、爆発したって、べつによくないですか?」

酒屋で暴行事件を起こし、野方警察署に連行された中年男・自称スズキタゴサクは取調べ中に秋葉原で何かが起こるという。直後に爆発が起き、さらなる爆発を予言。
連続爆発事件に警視庁捜査一課も乗り出し、スズキタゴサクと警察の心理戦がはじまる。

💣 感想・考察 ―― 読後に残る“倫理の爆発音”

なんて、いい意味で嫌な、、気持ちにさせてくれるサスペンス作品なんだ!(誉め言葉)
ミステリーとしても面白いし、読みごたえも抜群。読後の満足感も束の間、心に残ったページをめくって読み返す始末。本作の魅力にどっぷりとハマってしまった。

スズキタゴサクという不気味な存在は、洋画で言うところのハンニバル・レクター(『羊たちの沈黙』、『ハンニバル』等)やジョーカー(『ダークナイト』、『ジョーカー』等)を感じさせながらも、彼らが持つ悪のカリスマ像とは対極な、”無敵な人”である。
みすぼらしい風体とは裏腹に頭の回転の速さ、狂気じみた話術で警察を翻弄する姿は化物の如く目に映る。
彼が言葉巧みに繰り出す”演説”によって、人間の本質的な、根源的な悪意があぶり出され、己の善性について、そして底知れぬ悪意を量られたような気持ちになりました。

ミステリーとしても良質で、ひとつひとつの謎が解き明かされていくのがたまらなく読み心地がいい。
とくに中盤での取調べ中に提示されるゲームのような謎解きは、読んでいて――不謹慎ながら――楽しいと感じながら答えを想像していました。

映画化もされていて、鑑賞後に小説を手に取る方もいるかと思いますが、警察官の視点で描かれる心情は小説だからこそ読み取れる部分も多いので、ぜひ原作小説も読んでみてほしいです!

💬 印象的なセリフとシーン ―― “不気味な男”が暴く人間の本性

冒頭の取調べでスズキタゴサクが発した、

「でも、爆発したって、べつによくないですか?」

この男の持つ不気味さを一発で理解させる一言で印象的でした。
どうしようもない中年が爆発を予言し、作ったような哀しい顔を浮かべる。これだけでも充分薄気味悪いキャラクターだというのに、この一言で一気にスズキタゴサクという男には良識が欠落していると感じさせてくれる。
彼のセリフは印象的なものばかりなので、ぜひ皆様自身の目で読んでいただきたい。

⚖️ テーマ考察 ―― 善と悪の境界を見つめて

この小説で描かれているのは、人間が本質的に宿している悪である。
共感したかと問われ「はい、そうです」と答えるわけにはいかないが、スズキタゴサクの言葉に、心のどこかを刺されたように感じてしまう。
それは誰にでも当てはまるようなものかもしれないけれど、踏みとどまる善性を登場させることによってより悪意を引き立たせているのが憎い演出だと感じた。
それほどまでに悪役ヴィランとしてのキャラクターが確立されていて、同時に魅力的でもあった。

🎯 こんな人におすすめ ―― “羊たちの沈黙”好きなら刺さる!

ミステリー、サスペンス小説が好きな方にはぜひおススメです。
とくにハードな作品が好きなら絶対ハマるはず。
それから洋画が好きな方、『ダークナイト』や『羊たちの沈黙』などが好きな方もきっと気に入ってくれると思います。
映画鑑賞後に、さらに本作を深く楽しみたい方にはぜひ手に取っていただきたいです。

📘 この本で得られるもの ―― 緊迫感と、倫理を問う時間

ページをめくらずにはいられない緊迫感。
セリフ自体も長いけれど、するすると読めてしまうから集中力も緊張感も途切れません。
そして読後には、思わずため息がもれることでしょう。それは退屈だとか不満などではなく、一息に読み進めた満足感によるものです。

🔚 まとめ ―― “爆弾”はあなたの心にも火をつける

数々のミステリーの賞を受賞し、映画化もされ、注目度も高まっていますが、その注目度に見合った――いや、もっと注目されてもいい作品だと思います。
タイトルも秀逸ですよね。たった二文字で、この物語の持つパワーをしっかりと支えているように感じます。

映画も大変すばらしく、映像化にあたって削られた部分はありますが、本質的なテーマは変わらず。佐藤二郎さんの演技は真に迫っており、スズキタゴサクがそのまま小説から飛び出してきたようでした。

それぞれの人物が抱える内情や過去も、小説で深く描かれているので、映画を鑑賞後、あるいは鑑賞前に読んでみてください。
続編『法定占拠 爆弾2』も刊行されていますので、本作の読後はこちらもぜひ。

人間の悪意を見事に描き切ったミステリー小説『爆弾』。
自らの価値観を、倫理観を揺さぶる一作です。
読めばきっと、あなたは自問することになる――「自分はどちら側の人間なのか」と。

📚 書籍情報

『爆弾』(講談社文庫)
著者:呉 勝浩
出版社:講談社
定価:1,067円(本体970円)
ISBN:9784065363706(※書店で注文の際にご利用ください)

🔗 購入はこちら

コメント

タイトルとURLをコピーしました